マグマができる仕組み|火山噴火はどこから始まるのか
| マントルの岩石が、圧力の低下・水の供給・温度上昇によってマグマへ変わり、火山噴火へつながっていく仕組み。 |
マグマができる仕組み
火山噴火の映像を見ると、ふとこんな疑問が浮かびます。
「あの真っ赤な溶岩は、いったい地下のどこから上がってくるのだろう?」
多くの人は、地球の奥深くには巨大なマグマの海が広がっていて、地殻が割れるとそこから溶岩があふれ出すようなイメージを持っているかもしれません。
でも実際の地球は、少し違います。
マグマは、地下のどこにでも液体としてたまっているわけではありません。
地球内部のマントルはとても高温ですが、その多くは 固体の岩石 の状態です。
では、固体の岩石はどんな条件で溶けて、マグマになるのでしょうか。
今回は、マグマが生まれる仕組みと、火山噴火が始まる場所をやさしく整理していきます。
マントルは液体ではなく、熱い固体の岩石
マグマを理解するためには、まずマントルについての大きな誤解をほどく必要があります。
マントルは、地殻の下から深さ約2,900kmまで続く巨大な層です。
温度は非常に高く、場所によっては数百℃から数千℃にもなります。
それなら全部溶けているのでは?と思いたくなりますよね。
でも、そうではありません。
理由は 圧力 です。
地球の深い場所では、上に積み重なった岩石の重さによって、想像できないほど大きな圧力がかかっています。
この圧力は、岩石が溶ける温度を高くします。
そのため、マントルの岩石はとても熱くても、簡単には溶けません。
液体の海のように流れているのではなく、長い時間をかけてゆっくり動く熱い固体に近いのです。
つまりマグマができるには、ただ熱いだけでは足りません。
特別な条件が必要になります。
マグマができる条件① 圧力が下がる
マグマができる代表的な仕組みの一つが、圧力の低下 です。
深い場所にある熱いマントル物質が上へ上がってくると、上から押さえつけていた圧力が弱くなります。
温度は高いままなのに、圧力だけが下がる。
すると岩石の融点が下がり、一部が溶けてマグマになります。
この現象を 減圧融解 といいます。
減圧融解は、プレートが互いに離れていく場所でよく起こります。
代表的な場所が、海底にある中央海嶺や大陸のリフト帯です。
大西洋中央海嶺のようにプレートが左右に広がる場所では、下からマントルが上昇します。
そのとき圧力が下がり、マグマが生まれます。
このマグマが冷えて固まることで、新しい海洋地殻が作られていきます。
マグマができる条件② 水が岩石を溶けやすくする
二つ目の条件は、少し意外かもしれません。
それは 水 です。
水そのものが岩石を燃やしたり、直接溶かしたりするわけではありません。
けれど水は、岩石の融点を下げる働きをします。
この仕組みは、沈み込み帯 でとても重要です。
沈み込み帯とは、海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込む場所です。
海洋プレートには、海水を含んだ岩石や堆積物が一緒に運ばれています。
そのプレートが地下深くへ沈み込むと、高温・高圧の環境で水や揮発性物質が岩石から抜け出します。
その水が上のマントルへしみ込むと、岩石の結合が弱まり、通常より低い温度でも溶けやすくなります。
こうしてマグマが作られます。
このタイプのマグマは、ガスを多く含み、比較的ねばり気が強くなることがあります。
そのため、噴火すると爆発的になりやすいのです。
日本、インドネシア、チリ、アラスカなど、環太平洋火山帯に強い火山が多いのは、この仕組みと深く関係しています。
マグマができる条件③ 深部から熱が上がってくる
三つ目の条件は、とてもわかりやすいものです。
それは 温度の上昇 です。
地球の深い場所から、周囲よりもずっと熱い物質が上昇してくることがあります。
このような熱い柱のような流れを マントルプルーム と呼びます。
地表近くでは、これが ホットスポット の火山活動として現れることがあります。
代表例がハワイです。
ハワイはプレートの境界にあるわけではありません。
それでも火山島として有名なのは、地下深くから上がってくる熱いホットスポットがあるためです。
太平洋プレートは少しずつ動いていますが、ホットスポットは比較的同じ場所にとどまります。
そのため、プレートが動くたびに新しい火山島が作られ、やがて島々が列のように並ぶのです。
マグマと溶岩の違い
マグマと溶岩は、よく混同される言葉です。
でも違いはとてもシンプルです。
地下にあるときは マグマ。
地表に出て流れ始めると 溶岩 と呼びます。
つまり、もともとの物質は似ています。
ただし、どこにあるかによって名前が変わります。
地下にあればマグマ。
外へ出れば溶岩。
この違いを覚えておくだけで、火山の話がかなりわかりやすくなります。
アイスランドと大西洋中央海嶺
マグマ生成の仕組みを理解するうえで、アイスランドはとてもわかりやすい場所です。
アイスランドは、大西洋中央海嶺の上にあります。
ここでは、北アメリカプレートとユーラシアプレートが互いに離れています。
プレートが広がると、そのすき間を埋めるようにマントル物質が上昇します。
上昇すると圧力が下がり、減圧融解によってマグマが作られます。
アイスランドに火山、温泉、地熱エネルギー資源が多いのは、このためです。
アイスランドは、海底の中央海嶺が地上に現れている特別な場所ともいえます。
環太平洋火山帯と「火の輪」
環太平洋火山帯は、よく 火の輪 と呼ばれます。
日本、インドネシア、フィリピン、ニュージーランド、アラスカ、チリなどがこの地域と関係しています。
世界の活火山の多くが、この周辺に集中しています。
この地域では、海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込む動きが活発です。
沈み込む海洋プレートから水や揮発性物質が抜け出し、それがマントルの岩石を溶けやすくします。
こうしてマグマが作られます。
このマグマはガスを含み、ねばり気が強くなることがあるため、圧力がたまりやすくなります。
その結果、爆発的な火山噴火につながることがあります。
火の輪で大きな地震と火山活動が多いのは、どちらもプレート運動と深くつながっているからです。
ハワイ火山とホットスポットの秘密
ハワイは、プレートの境界にないのに火山島として発達しました。
その理由は、地下深くから熱い物質が上がってくる ホットスポット にあります。
ホットスポットの上にある場所ではマグマが上昇し、火山ができます。
その後、太平洋プレートが少しずつ移動すると、古い火山はホットスポットから離れていきます。
そして同じホットスポットの上に、新しい火山が生まれます。
この繰り返しによって、ハワイ諸島のように火山島が列をなして並ぶ地形が作られました。
ハワイの島々は、プレートの動きを記録した火山の足跡のような存在なのです。
火山噴火はなぜ起こるのか
マグマができたからといって、必ずすぐに噴火するわけではありません。
マグマは地殻の割れ目を通って上がることもあれば、地下のマグマだまりにとどまることもあります。
そのまま冷えて固まれば、地下の岩石になります。
では、どんなときに噴火するのでしょうか。
大きな鍵になるのが ガス です。
マグマには、水蒸気、二酸化炭素、硫黄ガスなどが溶け込んでいます。
マグマが上昇すると周囲の圧力が下がり、これらのガスが膨張します。
これは、炭酸飲料のボトルを振ってから開けると中身が吹き出すのに少し似ています。
マグマがさらさらしていれば、ガスは比較的逃げやすく、溶岩が流れるタイプの噴火になりやすいです。
一方、マグマがねばり気を持っていると、ガスが逃げにくくなります。
内部に圧力がたまり、ある瞬間に爆発的な噴火につながることがあります。
つまり噴火の激しさは、マグマの温度、ガスの量、ねばり気によって大きく変わるのです。
マグマ生成を知ると火山が違って見える
マグマができる仕組みを知ると、火山をただ怖い自然災害としてだけ見るのではなくなります。
もちろん火山噴火は危険です。
人の暮らしに大きな被害を与えることもあります。
でも火山は、地球内部のエネルギーが地表へ現れる現象でもあります。
マグマが冷えて固まれば、新しい岩石や大地が作られます。
火山灰は長い時間をかけて肥沃な土壌になることもあります。
火山は、地球がまだ生きている惑星であることを教えてくれます。
私たちの足元の深い場所では、今も圧力、熱、水、岩石が複雑に作用しながら、新しい地球の姿を作り続けているのです。
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[マグマができる仕組みと火山噴火の始まり]
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Kori Insight シリーズでは、科学、地球システム、エネルギー、自然現象をひとつながりの物語としてやさしく読み解いていきます。
マグマが地下で生まれる条件をたどることで、火山噴火がただの偶然ではなく、地球内部のエネルギーが地表に現れる大きな流れの一部であることが見えてきます。
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